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2010-01-07(Thu)

電子ブックで何故か語られない話。

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 電子出版の話は何故か「率」の話ばかりしていろいろ誤解を与えている気がするので、これをちゃんと実売で考えてみよう。


 本田雅一さんの記事を元にすると、紙媒体で定価1000円の本は

  • 書店 200円
  • 取次 100円
  • 印刷費 100円
  • 出版社 600円
    • うち、著者印税 100円

――になります。

 同じ書籍を電子媒体として売る場合、記事では「配信元・出版社が3:7で」という話が書かれていて、

  • 配信元 300円
  • 出版社 600円
    • うち、著者印税 100円

――という形になりそうに見えるけれど、実際には電子媒体は紙媒体に比べて値下げしないと売れないため、実際の販売価格は800円程度になるんじゃないだろうか(それでも「高い!」と文句を言われる予感がするけれど)。

 この場合の売り上げの分配は

  • 配信元 240円
  • 出版社 560円
    • 著者印税 100円? ――その場合の印税率は12.5%

――になるわけで、実際には紙媒体より出版社の取り分は減っているわけです。


 それどころか配信元から「もっと販売価格を下げて欲しい」という要望がある可能性もあり、例えば700円で販売する場合は

  • 配信元 210円
  • 出版社 490円
    • 著者印税 100円?(印税率は約14%)

――と、紙媒体より大幅に少ない金額しか出版社に入らない可能性だってあるわけだ*1

 その辺を明らかにせずに記事に「率」だけで書くのはいかがなものかと思うわけです(本田さんに限らないですけどね)。


 ちなみに文庫を基準にした場合は上記ほど値下げできず、紙媒体の6掛けで卸すんじゃないのかな? と予想してます。そもそも文庫は安売りしてるわけですから。

(500円の文庫なら出版社の取り分は300円で、それを3:7で計算すると430円での配信になるのかな)


(追記)販売数と収益についても考察しました。



著者印税の話

 ところで、現在は印刷部数に対して著者印税が支払われていますが、電子媒体になると半年(あるいは四半期)ごとに締めて支払われるはずなんですよね*2。とすると、著者にとっては結構困ったことになるわけです。

 上記の書籍の初版が5000部なら、発売日の翌月~翌々月くらいに50万円の印税が収入になるわけですが、これが電子媒体だと発売の数ヶ月後になるわけです。

 さらにそれまでに5000部を売り切っているとは限らないので、収入も低くなる可能性が高いんじゃないですかね。


 最初のうちは紙媒体と併売にするでしょうからいきなり著者の収入が遅くなったり低くなったりはしないでしょうけど、将来的に電子媒体がメインになれば上記のような事は充分起こりうるわけです。その時に著者に対して出版社がどのように対処するのか、ちょっと気になるところではあります。


 そんな感じで、出版社を縛ってるのは流通だけでなく著者との関係をどうするのかってのもあるわけですよ――電子ブックの話では何故かみんな無視してますけどね。


文庫落ちの前に電子ブック落ちすればいいのに

 電子ブックをソフトランディングさせる手っ取り早い方法は、ベストセラーの単行本を文庫落ちさせる前に文庫と同等の値段で電子ブックを販売することでしょう。そうすりゃ安価な文庫と比較されずに済みますからね。

 タイミング的に『1Q84』あたりは文庫落ちする前に電子ブック落ちするんじゃないかと予想してるところですが、どうでしょうか。


 あるいは、文庫落ちさせるほど売れなかった本を電子ブックで配信してみるという手もあるわけですが……管理費がかかるから既存の出版社的には嬉しくないのでやらないかもしれない。

 その場合は昔の文庫のように専門の出版社を立ち上げて、売れ行きが落ちた(最初に出版してから時間の経過した)単行本を集めて「●●電子文庫」とかやればいいんじゃないの? とか思いますけどね。

(とはいえ、全く新規に立ち上げるんだと、著者との関係を築くのが難しい気はしますけれど)


追記(2009-01-09)

 出版社としては卸値500円あたりに拘っていて、率には拘っていないんじゃないか――というお話です。

 だからAmazonが7:3で売りたいのなら、Amazonは1600円で売ればいいだろう、と(それなら出版社に入るお金は変わらないので)。*35:5なら紙媒体と同じ価格で売ればいい。

 ただその価格だと売れない(と判断してる)でしょうから、それで揉めてるんじゃないでしょうかね。


 とはいえ、単行本なら文庫くらいの価格にはできておそらくはそこが下限だろうから、だったら文庫にする前に電子ブックで売ればいいじゃん、ってのが「文庫落ちの前に電子ブック落ちすればいいのに」と思った理由です。ただし、それ以上はほとんど値下げできないから、文庫本に対する価格競争力は期待できないでしょう。

 ちなみに僕は電子ブックとして売るなら付加価値をつければいいじゃん派ですので、そもそも紙媒体をそのまま電子ブックにするのには懐疑的です。


 あと、既存の出版社にとって問題なのは前にも書いたけど資金繰りだと思ってます。

(著者への支払いタイミングも変わるけど、出版社に入金されるタイミングも変わるわけだ)

 「出版社が倉庫」なら「取次は金貸し(銀行)」なわけですよ。これもあんまり語られていないけど。

*1:印税を10%に据え置く可能性もあるけど、それでも出版社の取り分は減っている。

*2:知り合いはそうだったらしい。

*3本田さんの誤報だそうです。

itochanitochan2010/01/08 20:51はじめまして。
わからない点があったので質問していきます。

[quote]
 6割の中には著者の印税、編集、宣伝などのコストが含まれるが、目に見え辛いリスクも含めるともっとも大きなファクターは在庫を持つコストだという。“出版業は倉庫業”という人も多いが、6割と大きな取り分を主張する出版業者には、主張するだけのリスクを取ってきていたのだ。
(中略)
 日本での電子ブック事業に詳しい関係者に取材してみると、電子ブック化に際して日本の大手出版社は、売り上げ全体の7割を自分達が取りたいと主張しているようだ。つまり印刷コスト分は自分たちの取り分に組み込み、取り次ぎ分は流通コストの一部として電子ブック販売ポータルに渡す計算となる。
[/quote]
印刷しないから在庫しないから電子書籍なんですよね?

元の、印刷(100円)は0円になって、在庫(600円のうちの一部)も消えて、
電子書籍化すればその分だけ自動的に安くなるだろうと思っていたので、率でどうこうの話に落とされるのが理解できません。
たとえば(勝手な憶測ですが)出版社の倉庫在庫の費用が仮200円なら、

・配信元 300円(書店200円+取次ぎ100円)
・出版社 400円 (出版社 600円-倉庫(仮)200円)
  うち、著者印税 100円

で、合計700円(仮)程度のところから話がスタートすると思っていました。

あともう一点。
[quote]
 上記の書籍の初版が5000部なら、発売日の翌月~翌々月くらいに50万円の印税が収入になるわけですが、これが電子媒体だと発売の数ヶ月後になるわけです。

 さらにそれまでに5000部を売り切っているとは限らないので、収入も低くなる可能性が高いんじゃないですかね。
[/quote]
電子書籍にも「初版xx部」というようなことがあるのですか?
せっかくのIT化なのに、著作者への支払いがより遅くなるということ自体が不思議でなりません。

asakura-tasakura-t2010/01/08 22:00 前半については、印刷しなくても固定費が存在するからです。
(ちなみに、倉庫代はそんなにはかかりませんというか、なんでそんなにかかると思っているのか不思議です)

 後半については、紙媒体の出版では一般に書籍が売れなくても印税を著者に支払っている=先払いしているのです。それが電子媒体になると実際に販売された数に応じた支払い=後払いになるので、当然著者への支払いは遅くなります。
(また実売以上に印税を支払っていますので、実売を元にした印税率は10%より高くなります)

rocksrocks2010/01/08 23:17在庫リスクを小さく見積もりすぎています。まず、物理的な書籍は売れない場合、凄まじい容積になります。これは実際に出版社にいたことがある人なら実感できるのですが。
また、掛かる費用は倉庫に置いておく直接費用だけではありません。本田氏も書いているように、出版業でもっとも大きな経費は在庫関連です。対して電子ブックならば、出版社の負担は事務経費と編集にかかる直接経費、それに宣伝費ぐらいで済みますね。

itochanitochan2010/01/09 00:11回答ありがとうございました。
前半の倉庫費用の話は元記事からもってきているだけなので実情はどちらなのか存じません。両方の意見があれば、(何かの違いで)両方の事例があるのだろうと推測するしかできません。
後半は商慣習の違いとのことで、よくわかりました。
ありがとうございました。

packpack2010/01/09 00:36本田雅一さんの記事では「配信元:出版社が3:7」って言ってるのは出版社で、amazonは7:3を要求してるのではないですか?
つまり、本田さんは出版社側の1冊あたりの収益は減るということを前提にした上で今後出版業界がどう出るか問題提起してるのではないでしょうか?
最後の段落以外はこの記事で主張されていることがちょっとわかりづらいです。

asakura-tasakura-t2010/01/09 10:21 在庫リスクですが――あとでちょっと計算してみます。
 ただ、倉庫が巨大なのは出版点数が多いからで、個々の書籍の在庫が多いからではないように思います。
(出版社の経理には詳しくないので、実際に在庫管理の費用がこれくらいかかっているという資料がありましたらご教示いただければと)

asakura-tasakura-t2010/01/09 10:44 主張が分かりにくいのはすみません。
 「出版社は割合よりも卸値(記事の例なら500円)に拘ってるんじゃないのかな?」ってことです。だからAmazonが7:3で売りたいのなら、Amazonは1600円で売ればいいだろう、と(それなら出版社に入るお金は変わらないので)。5:5なら紙媒体と同じ価格で売ればいい。
 ただその価格だと売れないでしょうから、それで揉めてるんじゃないでしょうかね。

 出版社の収益が減るだろうというのは間違いないですが、その時にどこまでなら出版社が問題ないと判断するかであって、それは紙媒体の定価の5割くらいじゃないか――というのが僕の予想です。
(あとで記事の方にも追記しておきます)

hauhau2010/01/09 21:55CD等など、初月分だけ翌月に支払い、以降は半期(または四半期)という契約もありますよ。

asakura-tasakura-t2010/01/10 11:08今後はそういう契約になるかもしれませんね。でも、印刷分を印税として支払われるよりは「遅くなって減る」のは間違いないでしょう。

森田慶子森田慶子2010/01/10 21:07印刷物でも、実用書、特にパソコン系の書籍は「実売印税」が多いですけどね。

asakura-tasakura-t2010/01/10 23:18なるほど。であれば、そういうところで著作を出してる人は電子ブックでの印税の支払いに違和感がないかもしれませんね。

hylomhylom2010/01/11 03:49「在庫を持つリスク」というのは、単純に「倉庫代」だけではありません。たとえば、1000円の書籍を1万部刷ったとして、すべて売れれば確かに600×1万=600万円が出版社に入りますが、もし5000部しか売れなければ、売り上げの600×5000=300万円から、売れなかった分の印刷代100×5000=50万円を引いた250万円しか入りません。さらに必要経費もあります。もしこの書籍を売るのに、広告・宣伝・編集/デザイン費・人件費などで出版社側がたとえば300万円使っていたとしたら、5000部しか売れなかった場合は50万円の赤字です。

書籍を作るには著者だけでなく、編集者や校閲者、レイアウトを行うデザイナー、書店に売り込む営業さんなど多くの人が関わっているので、そこら辺のコストを考えると安易に安売りできない、というのが出版社側の考えだと思います。また、既刊書籍の電子化ならこれらのコストは低く抑えられますが、そうすると今度は(着うたの隆盛で売れなくなったCDのように)書籍の買い控えが起きるのではないかという懸念もあります。

asakura-tasakura-t2010/01/11 09:30 在庫リスクについてはこちらで書いていますので、よろしければどうぞ。
http://asakura.g.hatena.ne.jp/asakura-t/20100109/ebook
 出版社側の考え、というのはその通りです(そういう前提で書いてますから)。

 ただ、安売りすればバカ売れするとは僕は思っていません(文庫本は充分に安いので)。
 読者としてはどのような電子ブックを欲しいかについては、
http://asakura.g.hatena.ne.jp/asakura-t/20100108/ebook
で書いています。

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