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2012-02-14(Tue)

漫画雑誌がウェブに移行しない理由

| 漫画雑誌がウェブに移行しない理由 - 浅倉卓司@blog風味? を含むブックマーク 漫画雑誌がウェブに移行しない理由 - 浅倉卓司@blog風味? のブックマークコメント

 紙媒体の雑誌よりウェブで公開するほうが赤字になるからなのですが、何故か納得しない人がいるみたいなので簡単に計算してみたいと思います。


 紙媒体とウェブで違うのは印刷代等とサーバ等の維持費で、原稿料や編集費はどちらも同じだけかかります(この前提はいいよね?)。


 印刷代等は少年マガジンの編集長によると20ページで300万円くらいとのことですが、マガジンは150万部を印刷してるのでページ単価は0.1円くらいの計算になります*1

 最近のマガジンは500ページくらいありますから、印刷代等は1部50円くらいなのかな。定価が260円ですから、書籍よりはかなり高いですね*2

 ――ここまでが前提条件です。


 ここで月刊誌で定価500円、約500ページくらいで2万部発行、実売1万5千部、卸値が7掛けのケースを考えてみましょう(そんなに不自然な条件じゃないよね?)。

 この場合だと

印刷代等100万円(0.1円×500ページ×2万部)
売上750万円(500円×1万5千部)
収入525万円(750万円×0.7)

――となり、収入と印刷代等の差し引きは+425万円になるわけです。

 ウェブではこの収入は見込めないわけですから、紙媒体の雑誌を売ったほうが出版社的にはオトクになることが分かります。


 これでは納得しない人のためにもっと悪い条件で考えてみましょう。

 定価500円、印刷代等が定価の2割、1万部発行、実売5千部、卸値が6掛けというケースだとしても

印刷代等100万円(500円×0.2×1万部)
売上250万円(500円×5千部)
収入160万円(250万円×0.6)

――となり、この場合でも収入と印刷代等の差し引きで60万円が残るわけで、ウェブで公開するよりいいんですね。


じゃあ「漫画雑誌は赤字」って何でさ?

 これは媒体に関わらず必要になる原稿料や編集費等のためです。

 原稿料を安めのページ1万円としても、約500ページの雑誌なら約500万円かかります。また編集費等の経費に100万円くらいはかかるでしょう。

 前述のケースでは印刷費等に100万円かかるわけですから、トータルで700万円になります。「定価500円、約500ページくらいで2万部発行、実売1万5千部、卸値が7掛け」の場合収入が「525万円」になるわけですから、「175万円の赤字」になるわけです。

(ウェブの場合はこれが600万円+αの赤字になります)


印刷代等は本当にページ単価0.1円なの?(追記:2012-02-17/紙について)

 雑誌によるとは思いますが、多分それくらいじゃないですかね?

 手元にあった雑誌をページ単価0.1円で計算すると原価率がだいたい10~20%の間に収まるみたいなので、そんなには間違っていないと思います。

少年マガジン260円約500pp(50円)約19%
少年サンデー260円約450pp(45円)約17%
サンデー超420円約500pp(50円)約11%
サンデーS500円約850pp(85円)約17%
ゲッサン500円約700pp(70円)約14%
コミックブレイド580円約950pp(95円)約16%
サンデーGX550円約450pp(45円)約8%
コミックハイ!600円約420pp(42円)約7%

 「サンデーGX」「コミックハイ!」は10%を切っているので、もうちょっとページ単価が高い(いい紙を使っている)可能性が高そうです。

(ページ数も少ない=原稿料も少ないので、部数が少なくても成立しやすいでしょう)


(追記:2012-02-17)

b:id:FTTH GXは割といい紙だったけど(変わってなければ)、ハイは普通。

 「コミックハイ!」の紙は他誌より非常に厚いので、ほぼ確実に高いと思います。(やはり原価率の低い)『まんがタイムきらら』なども同じような紙じゃなかったかな。

 これらの雑誌が厚い紙を使ってるのは少ないページ数で束を出すためだと思います。「コミックハイ!」は創刊当時、今よりページ数が少なかったですし。実際のページ数より雑誌の厚さで値頃感を判断する人が多いからそうしてるっぽいです(単行本でも同様のことをしてたりするので)。


それなのにウェブで公開してるとこがあるのはなんで?(追記:2012-02-17/宣伝効果について)

 それでもあえてウェブを選ぶ理由があるとすれば、それはページ数(作品数)を集められない場合でしょう。

 月刊雑誌の体裁をとるためには500ページ(15作品)程度は欲しいわけですが、きちんと月刊で描ける作家をそれだけ集めるのは大変です。それができないところは紙媒体では出しにくいため、ウェブを使っているんじゃないでしょうか。

 ですからウェブで公開してるところはだいたい連載が15作品以下(おそらく10作品以下)のように思います*3

(※未確認。そのうち調べるかもしれません)


 また入校スケジュールが分散されるため、編集部の人員が少なくても回しやすい可能性も高そうです*4


(追記:2012-02-17)

b:id:FTTH 「ページを集められない」場合もあるだろうけど、だけじゃないよねえ。広告宣伝費との兼ね合いでどう見てるのかは気にしてる。

 「広告宣伝費」が何を指してるかによりますが、「広告収入」のことは後述します。

 「単行本の宣伝」という意味であれば、ウェブで無料公開してもあまり宣伝にはなっていない気がします。ビュー数の多さをオビなどで売り文句にしてるものもあった気がしますけれど、それが印象に残ってる本の記憶はほとんどないですし。

 普通に単行本を出して書店に並ぶことや、それがウェブメディアに取り上げられることの方が宣伝効果が高いんじゃないでしょうか。

(描き下ろしの漫画の単行本がほとんどない理由は分かりませんけれど。基本的には単行本を作るために連載してると考えていいんじゃないかな)


(2012-02-17追記)雑誌なんだから広告収入もあるんでは?(追記:2012-02-18/宣伝収入の補足)

 広告についての資料が分からないので、残念ながら具体的な話はできません*5

 そもそも漫画雑誌は他の雑誌に比べて広告が少ないですし、ほとんど広告が載っていない(あるいは自社広のみの)雑誌もありますし、気にしなくてもいいのでは――とか思っていたのですが、それでも裏表紙(表4)には載ってる事が多いですし、あそこはそこそこの値段がついていたような気がします(部数が少ない雑誌でどれくらいかは想像もつきませんが)。

 同様にウェブにも広告があったりしますが裏表紙の広告よりも高いような気はしないので、その意味でもウェブより紙媒体の雑誌を選ぶ気がします。


(追記:2012-02-18)

b:id:tatsunop 広告費は小学館だとこの辺に。 http://adpocket.shogakukan.co.jp/ 偏差が大き過ぎて平均は無意味っぽいけど。

 紹介されたサイトをざっとみたところ、裏表紙(表4)で50万円あたりが最低ラインみたいです*6

 ウェブ広告で50万円というのはどれくらいの規模のサイトなのか分かりませんが、漫画サイトでそれだけの広告収入を得るのは難しそうな気がします*7


 資料を読んだ感想としては

  • 漫画雑誌の広告は基本的に高くない
    • やっぱり漫画雑誌以外のほうが高かった
  • 漫画雑誌だとざっくりと青年誌>少年誌>少女誌みたい
    • 部数より広告効果のアリナシが重要っぽい(当然ですが)
  • 裏表紙裏(表3)って安いのね。中のカラー広告より安いとは思ってなかった。

――でした。


 ウェブ広告もクリック率(あるいは収入)も「青年向け>少年向け>少女向け」の順になってるような気がするのですが、実際はどうなのかな。

 この辺についてはJコミのデータが知りたいところです。メルマガとかで可能な範囲で公開しないかな*8



(2012-02-17追記)ウェブは無料の前提なの?

b:id:mobanama よくわからん。「公開」って無料が前提?

 有料のものもあるのですがそれらが売れているという話は全く聞きませんので*9、利益が60万円に達しているものはおそらくないように思います。

 (ここでは考慮していない)携帯コミックの描き下ろしはちゃんと売れているみたいですけれど、携帯コミックで少年(少女)漫画の描き下ろしをやっている話は聞いた事がありませんので、少なくとも出版社は少年(少女)漫画はウェブのほうがよいという判断をしている模様です。

*1:300万円÷150万部÷20ページ=0.1円

*2:それでも2割には満たないけど。

*3:10作品が各28ページなら280万円程度の原稿料に抑える事ができるため。

*4:月刊誌を編集長1人で回していた雑誌もあることはありますが、一般的ではないでしょう。

*5:昔どこかのサイトで広告料を見た気はするのですが、憶えてません。

*6:あくまで小学館の雑誌なので、もうちょっと安い漫画雑誌もあるかもしれません。また、1年契約とかで安くなるケースもあると思います。

*7:Jコミって月にどれくらいの広告収入になってるんだろ。現行サイトだとあそこが一番広告収入が多そうなので、ちょっと気になる。

*8:というか、メルマガの話はどうなったんだろ。うちには届いてないんだけど。

*9紙媒体からウェブに移行して全く売れずに規模を縮小している事例ならある。

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