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2010-01-14(Thu)

電子ブックの配信は紙媒体よりコストが高い、という話

| 電子ブックの配信は紙媒体よりコストが高い、という話 - 浅倉卓司@blog風味? を含むブックマーク 電子ブックの配信は紙媒体よりコストが高い、という話 - 浅倉卓司@blog風味? のブックマークコメント

(2010-01-20追記:Amazonが売り上げの7割を要求しているのは本田さんの誤報との事でしたので、修正しておきます*1。論旨そのものは変わりません)


 電子ブックになれば物流がなくなってコスト削減になるはずの配信元が5割とか7割を主張するのはおかしな話だよね? 既存の(紙媒体の)流通は3割でなんとかなってるんだからさ。何故かツッコんでる人見かけないけど。

 電子ブックの配信元がそれ以上を要求してるってことは、要するに電子ブックは既存流通に対してコスト競争力がないってことじゃないかな。


 以前の試算にあわせて1000円の本が3000部売れた場合、

  • 書店+取次(3割、300円) 90万円
  • 出版社+著者(7割、700円) 210万円

――になりますし、同じ内容の電子ブックが700円だとすると

  • 配信元(3割、210円) 63万円
  • 出版社+著者(7割、490円) 147万円

――になるのですが、どうやらこれでは配信元は不服だということです。

 配信元の取り分を5割とか7割にして欲しいってことは、

  • 配信元(5割、350円) 105万円

あるいは

  • 配信元(7割、490円) 147万円

――を望んでるわけです。

 これだと紙媒体の流通のほうがずっと流通コストが安くて、「電子ブックなら紙媒体より安くなる」という前提がおかしいんじゃないの? という気がしますね。

 出版社に「在庫コストなくなるじゃん!」と言うんであれば、物流がないはずの電子ブックの配信がこんなに高いのはおかしい気がします。少なくとも出版社にだけ文句を言うのはおかしいでしょ?


 とりあえず、電子ブックの配信コストは紙媒体の流通で3000部販売した場合の1/5で済むと仮定してみましょう。上記の例だと18万円ですね。そして配信は売れても売れなくても、かかる費用はほとんど変わらないはず*2

 そこで18万円を稼ぐのに必要な販売部数を計算すると、

  • 配信元(5割、350円) 515部
  • 配信元(7割、490円) 368部
  • (参考)配信元(3割、210円) 858部

――になります。つまり配信元はせいぜいこれくらいしか売れないと判断してるわけです。

 要するに紙媒体の流通で3000部売れる本が、電子ブックでは1/6~1/10くらいの販売部数になると「流通元が」判断してるってことでしょう。1/4を超えるとは考えていないみたいです。

(なお、配信元が1作品を売るのに固定的にかかるコストが18万円より安いのであれば、もっと売れないと判断してるってことになります)


 「電子ブックが売れない」と判断している一番の理由は「表示端末が必要なこと」でしょう。だって紙媒体なら表示端末が必要ないのですから。

 ここが音楽や映像メディアと違うところです。音楽や映像は再生機器が別途必要ですが、紙媒体は再生機器とセット販売されてるようなもので、特別な機器は必要ないという特性があります*3

 表示端末を持ってる人の数より、紙媒体を読める人のほうが絶対に多いわけですよ。さらに言えば「電子ブックでなくちゃ」なんて思っていて、わざわざお金を出して端末を買う人の数は相当に少ないわけです。

 とはいえ、電子ブック端末を買うような人は書籍を沢山買っている人だろうから、ある程度の販売数は見込めると思います。だからこそ紙媒体の1/6とか1/10を見込んでいるのでしょう。


 というわけで、電子ブックは販売部数が見込めません。部数が見込めない本を売る時は単価を上げることを考えます*4

 ここで電子ブックの販売価格を3000円としてみましょう。

 その場合は

  • 配信元(3割、900円)
  • 出版社(7割、2100円)
    • うち、著者印税(14%とした場合、420円)

――になり、この場合配信元は200部売れればさきほど仮定した配信コスト18万円の売上を達成できます。素晴らしいですね。

 この時の著作印税は8.4万円で出版社に入るのは33.6万円ですからあまり嬉しくないでしょうけれど。


 3000円の本なんて売れない――なんて思う人もいるかもしれませんが、技術書なんかは紙媒体の定価が高いですから、いけるんじゃないでしょうかね?

 あるいは以前に書いたように全集やシリーズ物をまとめたものなら相応の価格で売れると思います。

 そもそも電子ブック端末という高価な再生機器を買ってる人を相手に売るのだから、安いものを大量に売るより高価で価値のあるモノを売ったほうがいいでしょう*5


 とはいえ、上記の例とだとバランスが悪いので、

  • 配信元(1割+登録費10万円)
  • 出版社(9割-登録費10万円)
    • うち、著者印税(2割)

――みたいな感じで、配信元は固定費をとって割合は減らしたほうがいい気がしてます。

 この条件で300部と500部売れた時はそれぞれ

  • 配信元 19万円→25万円
  • 出版社 53万円→95万円
  • 著者印税 18万円→30万円

――になりますから、それなりにリスクにあった配分になりそうですしね。


 いずれにしても電子ブックは安価で売る事を考えないほうが成功すると思うよ。安価で売るには数を売らなくちゃいけなくて、電子ブックは数がでないことが分かってるんだからさ。

(以前失敗したのも安価で売ろうとしたせいだと思うしね)

 あと、出版社は紙媒体のものをそのまま電子ブックにするなんていう手抜きはしないほうがいいと思うよ。前にも書いたけど電子ブック向けに再編集したものを売ろうね。そうすりゃ勘違いする人も減るんだからさ。おねがい。


蛇足

 現在の紙媒体の優位性は「売れてるから」であって、紙媒体が売れなくなってくると電子ブックとの価格差が縮まってくるでしょう――それは「電子ブックが安価になる」からではなく、「紙媒体の値上げ」という形で。

 ともあれ、現在より本(電子ブックも紙媒体も)の価格が安くなるような気はあまりしてません。

*1:それはそれとして、現状でもダウンロード販売は再版とは関係ないのだけれど。何と戦ってるんでしょ?

*2:そこが配信のいいところですよね?

*3:何故か無視している人が多いけれど。気付いてないだけなのかな?

*4:紙媒体ではそうしてます――大判にしてみたり、カラーにしてみたり、装丁を豪華にしてみたり。まあいろいろと方法はあります。

*5:ちなみに僕は「安ければ」なんて言ってる連中が電子ブック端末に手を出すとは思ってないです。理由はこちら

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